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答案作成のプロセス

遅ればせながら,法学セミナー9月号に目を通しました。
「憲法 解釈論の応用と展開[総合演習4]答案作成上の注意」(p60以下)を題材に,答案作成のプロセスについて,考えていきたいと思います。

第1 問題の所在をつかむ

新司法試験では,後日呈示される出題の趣旨等を見れば,出題者が何を論じて欲しいと考えていたのかが分かります。出題の趣旨やヒアリング,再現答案等と照らし合わせながら,事後的な検証を通じて,求められる答案の形を追求していくのはとても重要なことです。その重要性は,すでに各方面で説かれているところです。
しかしそうした後知恵とは別に、実践的には、あの出題を初めて見た場で皆さんがどのように対応し、思考を整理」(同p62より引用)していくかという視点も大切です。その点に関して,同連載の第4項は,憲法の問題を見たときの頭の使い方=争点のとらえ方が明快に示されており,必読です。

憲法に限らず,争点(最も厚く書くべきところ)の発見に至る思考方法・問題へのアプローチ方法は,あらゆる問題に対して使うことができる普遍的なものです。
このようなアプローチ手法を学ぶ教材として,たとえば民法・民訴のLIVE本がおすすめです。
問題検討の頁で,論点発見に至る思考プロセスが丁寧に示されています。
これらの教材を使う目的は,たとえ既知の論点であっても,そのような思考プロセスをたどって論点を発見できるようにすることにあります。
すなわち,単に「知っているからできる・解ける」状態から,「論点発見のプロセスを事例に即して説明できる」状態にもっていくということです。

また,それらの教材で特に見る(・読む)べきは,論点それ自体への解答ではなく,そこへ至る過程(問題の所在に至るまでの頭の使い方)です。
問題の所在にたどり着くまでの頭の使い方を自分のものにして下さい。既存の論点の勉強を通してこれができるようになれば,未知の論点であっても問題の所在にたどりつける(気づける)ようになるはずです。
基本から1つ1つ積み上げて考えていくという方法は,どの法律科目にも有効なアプローチです。
※私が通っていたローで超人気ゼミを持っていた有名な某弁護士は,「司法試験は論理の試験。論理を1つ1つ積み上げていけばいい。問題の所在を示すまでの論述で勝負は決まる。」と言い切っていました。

第2 論点の解決を考える

「判例もしっかり読んだ、有力説も勉強した、でもいざ答案を書く段階では、出来合いの「論証」を書く以外ないじゃないか、という皆さんの悩みも伝わってきます。」(同p61より引用)


当ブログでも,個々の記事や皆さんからのご質問に対する回答として,すでに書いていることですが,個人的にとても大切なことだと考えているので,再度書きます。

司法試験の試験範囲は膨大であり,かつ,勉強期間は限られているので全事項を同じ深さで勉強していくというのは無理な話です。ひたすら知識を追い求める勉強は非効率です。そこで,中心的に押さえるところと,そうでないところを分けていく必要があります。
では何を中心的に押さえなければよいのか。それは,多くの問題(≒論点)を解決することのできるツールとなる部分です。すなわち,法の仕組み,条文,制度の趣旨,定義などの基本的部分であり,これらをしっかりと押さえておくことは,前述の問題に対するアプローチ手法を理解するのと同じくらい大切です。

実際にどのように役立つのかについて,条文の趣旨を例にとって説明すると,いわゆる「論点」というのは,「条文の文言(特に「要件」の部分)の解釈」に関わることがほとんどです(条文の文言に記載されていないことが問題となる場合でも話は同じです。)。
条文の文言の解釈(論点解決)を行う際には,条文の趣旨を忖度し,そこから演繹して論証し,規範を定立して,文言の意味,適用範囲を決め,事実をあてはめていくことになります(法的三段論法)。→ cf.「論述の大枠

条文の趣旨を押さえておくことで,同一条文における複数の文言の解釈について,個々の論証を覚えなくても論証することが可能になります。また,それが既知の論点であれば,予め論理の流れさえ押さえておけば,その場で容易に論証を再現することが可能になりますし,未知の論点であれば,条文の趣旨から自然に導かれる解釈を提示すればそれでよいということになります。
制度の趣旨を押さえる意義についても同じことです。こちらは,条文の解釈の場面ではもちろん,条文とは離れたところでの法律論が求められるときにも役立ちます。
このような方法は,既知の論点については,問題に応じて論証を伸縮自在にすることが可能になるとともに,未知の論点についても(妥当な)解釈を導くことができる点で優れています。
論点の処理を考える際に,逐一趣旨等から考えていく方法は,はじめは億劫に感じるかもしれませんが,頭の使い方に慣れてくると,原則としてどの論点も同じように解けばよいため,論点の勉強が楽になるはずです。「要はここを押さえておけばよいのだ」ということが分かってくると,頭の中もすっきりと整理されていくと思います。

他面,論証それ自体にフォーカスして,その流れを覚えていくという作業は,個々の論点に対する解答(論証)のパターンを記憶していくことによって,当該論点が問われたときに時間も節約できますし,反射的に書くことができるため,一見効率的に見えます。たしかに,論証の論理の流れを押さえていくことは必要なのですが,個別の論証は,一字一句覚えるべき対象ではありません。
注力して理解すべきは,個別の論点(ここでは条文解釈を想定)を内在する文言≒要件が書かれた条文の趣旨・その条文の背後にある制度の趣旨等です。

受験勉強をしていると,どうしても新しい知識や論証の知識そのものを習得する方に力が入ってしまいがちです―ピラミッド構造に例えれば,一番下の床に位置する部分―。短答式試験でそのようなピンポイントの知識が問われることもあるため,なおさらです。
それはそれである程度必要なことだとは思いますが,論文式試験対策という観点からみると,勉強をしていく過程で,最も力を割くべきところはどこか―ピラミッド構造に例えれば,前述の知識の層よりも一段,二段上の部分―ということを折に触れてに意識しておくこと(意識しなおすこと)が大切です。

第3 具体例

簡単な事例を元に,少し具体的に考えてみます。
自作の事例なので,変なところがあるかもしれませんが,ご容赦ください。なぜ刑訴の問題なのかといえば,(弁護修習の空き時間に)刑裁の勉強をしつつこの記事を書いたからです

事例
 平成X年9月18日ころ,東京都〇〇区××3丁目〇〇方前路上において,Vが胸を刺されて倒れているとの通報があり,捜査が開始された。
 後日,捜査線上にV殺害の被疑者としてAが浮上し,Aは,V殺害の容疑で,通常逮捕され,勾留された。平成X年Y月Z日,〇〇警察署において,ベテランの司法警察員K1によりAの取調べが行われた。なお,同署の取調室は,8畳ほどの広さであり,部屋の中央に床に固定された大型の机が置かれ,そこから少し離れたところに,壁に接する小型の机が置かれ,捜査官と被疑者が机を挟んで座って対峙する形で取調べが行われるようになっている。
 Aが取調室に連行され,中に入ると,K1と今年採用されたばかりの新人のK2が座っており,K2は,小型の机に座ってパソコンに向かい,Aから聞き取った内容をメモしていた。Aは,取調室に入るなり,K1とK2に対し,「刑事さん,私はやっていません。」とすがるように言ったが,K1は,「話はこれから聞くから。」とだけ言って,Aに対し,椅子に座るように促した。
 K1は,Aと世間話をしながら,取調べを進めていき,Aも初めのうちは質問に答えていたが,犯行内容について話が及んだとき,Aは,「知りません。先程も言ったとおり,私はやっていないんです。Vは私の友達です。何かの間違えです。」と言ったが,K1は,「そんな話は聞きたくない。」と言って取り合わなかった。以後,Aは,K1が質問をしても一切答えなくなった。
 K1は,どう質問を変えてもAが下を向いたまま一切答えようとしないため,次第に激昂し,「ふざけるな。おれが刑事を何年やっていると思っているんだ。甘く見るなよ。黙っていれば刑がどんどん重くなるぞ。」などといいながら,Aに対し,手に持っていた筆記具を力任せに投げつけ,机を膝で思いっきり数回蹴り上げた。筆記具はAの体に当たって床に落ちた。
しかし,依然としてAが下を向いたままであったことから,怒りの収まらないK1は,椅子から立ち上がって,「このやろう。」などと怒鳴り,机に両掌を数回叩きつけ,Aの顔を覗き込んで睨みつけた。K2は,これまでの一部始終を見ていたが,K1のあまりの気迫に驚き,K1を必死に制止したところ,ようやくK1は冷静さを取り戻した。
 K1は,溜息をついてから,椅子に座りなおし,Aに対し,ぶっきらぼうに「それで,どうなんだよ。」と聞くと,Aは,K1の一連の行動に畏怖するあまり,これ以上K1を怒らせれば大変なことになると思いこみ,Vを殺害していないにも関わらず,「すみませんでした。私がやりました。」と犯行を自白した。その後,K1は,捜査の過程で発見された証拠に基づき,AによるV殺害のストーリーを思い描きながら,自分でストーリーを述べた後に「要するに,こういうことだよな。」とAに確認する形で,K2に調書を作成させていった。その間,Aは,ただ「はい。」と答えるのみであった。
同日の取調べで,Aの自白を内容とする員面調書(以下,「本件員面調書」という。)が作成された。なお,本件員面調書の末尾にはAの署名・押印がある。
 Aは殺人罪で起訴され,検察官Pにより本件員面調書が証拠調べ請求されたところ,Aの弁護人Bは,「本件員面調書については,不同意。」との証拠意見を述べた。


本件員面調書の証拠能力について論ぜよ。AがVを殺害していた場合に結論は異なるかについても論ぜよ。



(1)設問前段を考える
この問題を解く際に,考えていく順序はおおむね以下のとおりになると思います。解答は記載せずに質問形式にしてみます(質問自体から前の答えが分かるものもありますが

①本件員面調書の証拠としての性質を述べてください。
②伝聞証拠の意義を述べてください。
③伝聞証拠であると証拠能力はどうなりますか。
④伝聞証拠であれば如何なる場合も証拠能力が否定されるのですか?
(仮に,証拠能力が肯定される場合が複数あるならすべて挙げてください。)
⑤本件では,例外の内,どれが問題となりますか?
⑥被告人の員面調書については刑事訴訟法上,明文の規定がありますか?
⑦その条文に,本件の事実をあてはめてみてください。
⑧一義的に当てはまるかどうか分からない要件はありましたか。あるならば,その点について条文に則して問題提起をしてみてください。
⑨なぜ,「任意にされたものでない疑」のある自白は証拠能力が制限されるのですか?
⑩その趣旨・根拠から規範(判断基準)を定立してみてください。
⑪その規範に本件の事実関係をあてはめてみてください。



①ないし⑩で考えたことをそのまま論述に使うと,例えば次のように書けるでしょう。
いろいろな書き方があると思いますが,あくまで一例として。

本件員面調書は,Aの供述録取書であり,公判期日における供述に代えて書面を証拠としようとする伝聞証拠であるから,原則として証拠能力は認められない(刑事訴訟法320条1項)。
 ただし,伝聞例外の要件を満たす場合には,例外的に証拠能力が認められうる。本件員面調書は,被告人の供述録取書であるから,問題となるのは法322条1項ただし書きの適用の可否である。
 本件に則して同条の要件該当性についてみると,検察官Pによって証拠調べ請求がなされた本件員面調書は,Aの自白を録取したAに不利益な事実の承認を内容とするものであり,Aの署名・押印も認められる。
 もっとも,Aの自白は,K1による威圧的な取調べを契機としてなされるに至ったものとして,「任意にされたものでない疑」のある自白にあたり,証拠能力が否定されるのではないかが問題となる(刑事訴訟法322条1項但書,同319条)。
そこで考えると,法319条が任意性に疑いのある自白の証拠能力を否定するのは,任意性に疑いのある自白は,虚偽の危険性があり,誤判を引き起こすおそれがあるからである。そうだとすれば,「任意にされたものでない疑」のある自白とは,虚偽の危険性がある自白をいうと解すべきである。具体的には,当該自白に至る外部的事情に基づき,その影響下における自白であるといえるかによって判断する。



(2)設問後段を考える
事例とは異なり,真実AがVを殺害していた場合に結論が異なるか,という問題です。
問題を見た瞬間にこちらの意図(出題の趣旨)を見抜いた方もいるかもしれません。
解答者が制度の趣旨から考えられているかどうかを聞くのが狙いです。
自白法則については,多くの人が判例に近い虚偽排除説に立つと思われるので,自白法則の趣旨について任意性説を取ったときに,自白が真実であった(=虚偽ではない)場合に,任意性は肯定されることになるのかということを聞きたいわけです。基本書にもこのあたりの記述があるかもしれません。もしくは,虚偽排除説に対する批判として書かれているかもしれません。

仮に,設問前段を虚偽排除説の立場から論じたとして,設問後段は,問題提起に至るまでをどのように書いていくべきでしょうか?

問題意識を知らないとしても,基本から考える癖が付いている人は,問題の所在にたどり着けるはずです。思考パターンを単純に文章化すると次のような感じでしょうか。

「何を聞いているんだろう?ひとまず,与えられた条件を素直に考えてみよう。AがVを殺害していた場合には,K1の行為の影響があったにせよ,Aは本当のことを言っていたことになるな。Aが真実を自白したことがどう影響するんだ?自白が真実・・自白が嘘でない・・,良く分からないな。ひとまず,問題になる条文・制度の趣旨を考えよう。そうそう,自白法則の趣旨は,自白偏重による誤判の危険性を排除するために,虚偽のおそれがある自白を排除することにあるんだった。そうか,そうすると,Aが本当のことを言っているなら,誤判の危険性はなく,自白法則は適用できないのではないかが問題になるな。うーん,でもそれは座りが悪いな。じゃあ,ここから先はどう書こう。自白法則は,虚偽の「おそれ」がある自白を排除するものであるから,内容自体が実際に虚偽かどうかは関係ないともいえるんじゃないかな。その線で考えてみると本件は・・・」


あとは,考えたことをそのまま論述していけばいいことになります。
(※もちろん,自白法則の趣旨について,違法排除説を採ったり,基本は虚偽排除説に立ちつつ違法排除説的な要素も加味して考えるという人もいるでしょう。それはそれで1つの解答になります。その意味で,論文の答案には複数の正解があるということができます。)


以上長々と書きましたが,何かのヒントになれば幸いです。
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