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【特別連載・論文式試験の書き方全般について】byN氏

論文式試験の書き方全般について。
大切なことですので,私の意見も合わせて記載させてもらいました。

※特別連載の説明,目次は「こちら


私は,論文を1つの「作品」だと考えています。論文が自分の考えた事柄を自分の名前を書いて人に読んでもらうものだからです。ですから,自分の書いた1字1句に責任を持つようにしていました。この姿勢は,私は重要だと思います。細かくて予想外の批判を受けたときは結構落ち込みましたが,言い訳をせず批判を受け入れ,表現力の向上に努めようとしました。表現はあまりローでも指導されない点ですので,ゼミでの指摘は有益だったと思います。
そこで,私は,論文の書き方全般に関しても,指摘された事柄を中心にいくつかの注意事項を事前にまとめました。それを整理してみやすい形にしたものを参考までにアップさせていただきます。これも,科目別のポイントと同様に自分自身の癖や失敗経験から出てきているものですので普遍性の程度は保障できませんが,参考にしてみてください。

1 総論
(1)「問題提起(必ず条文をいれる)→規範定立(~とは,とか,要件立て)→あてはめ(規範とファイナルワードを統一)→結論」の流れを意識。
・必ず,それぞれに理由を付すこと。
・結論は完全な形で書くこと。(例:~条に反し違憲)
・これらができていう答案は,非常に流れがあり,読みやすい。
・だいたい「問題提起+規範定立:あてはめ=4:6~5:5」を理想とする。

【maso注】
法的三段論法をきちんと守ることが得点につながります。メイン論点では,この形を死守しましょう。cf.「論述の大枠


 (2) 問題提起の仕方で理解が出る。きちんと効果まで書く。
例)×正当防衛が成立しないか ○正当防衛が成立し,違法性が阻却されないか
×会社法831条1項3号の決議取消事由に該当しないか ○会社法831条1項3号に該当し,取消されないか

【maso注】
これも大切です。思考過程を丁寧に論述して,問題の所在を示してください。cf.「某連載」,「理由づけ


 (3) 自分の立てた規範に責任を持つ。
規範を立てた以上,きちんとその規範にあてはめる。苦し紛れに規範を立てることは必ずある。その時にたとえ規範が間違っていてもあてはめができていれば規範に関する減点で済む。しかし,あてはめもできなかったら,規範のみならずあてはめに関しても減点されて2倍痛い。

【maso注】
規範とあてはめはリンクしています。規範の理解がしっかりとしていないと,あてはめもうまくできません。あてはめがうまくできていない場合には,規範の理解が正確でないと見られてしまいます。


 (4) あてはめは,事実→評価→結論で全て分けて書く。
事実だけ,評価だけの答案は全く分からない。
事実はできるだけ具体的に書く。具体性の典型は数字。
評価は自明でも書く。助詞で評価しない(×300mもあり ○300mと長く)。
例)(2007刑訴)
「2回目の犯行の時に甲が現場付近をうろついているところの目撃証言および3回目の犯行時に甲に似た男が現場を去っていくところの目撃証言が存在(事実)し,甲が犯行との何らかの関係性を有している(評価)と考えられる。また,甲のアルバイト先でベンジンが盗難にあっており(事実),犯行に使われた可能性がある(評価)。加えて,甲が「確かR駐車場にはC社製の車があったよね」(事実)などと犯行をほのめかす(評価)発言をしていることがうかがわれる。以上から,甲の嫌疑は充分に高いといえる(最終評価)」

【maso注】
超重要な視点です。あてはめでこれがうまくできれば,それだけで差をつけることができます。研修所の起案でも,①証拠による事実認定と,②その意味付け(=評価)とは明確に分けて書かなければ全く点になりません。司法試験の場合は,すでに証拠によって事実が確定されており,所与のものとして与えられているので,①問題文から,法律的に意味のある事実を的確に拾い上げるところと,②拾い上げた事実が法律論との関係でどのような意味を持つのか評価する(=経験則・論理則に従って,推認過程・理由を書く)ところにそれぞれ配点があると考えられます。cf.「理由づけ


 (5) 時間内に6枚ずつは書く(民事大大問は12枚)。その中で,配点に合わせて枚数を割り振る。

【maso注】
配点比率が示されている場合,面倒でも枚数割り付けをしてください。論述のベストバランスを試験委員が示してくれているのですから,これを利用しない手はありません。


 (6) 時間配分に気をつける。
答案構成は30分~35分。どんなに伸びても40分。
書くのは1枚12分。考えながらだと15分。

【maso注】
自分が答案1枚を書くのに何分かかるかをあらかじめ知っておくことは必須です。


 (7) メリハリ。幹は幹として,枝は枝として,葉は葉として書く。量も合わせる。
枝葉末節な論点をそれなりに,根幹の部分の論点をきちんと書かないと立派な木(論文)にならない。幹の部分=出題の趣旨→問題文に正面から答える姿勢が重要

【maso注】
見極めは難しいですが,基本的なところ=瑣末な論点,というような思考だけはしないように注意する必要があると思います。cf.「思考過程をそのまま論述することの大切さ」,「答案作成のプロセス


 (8) 書き順が大事。
書く順番→請求相互の関係の明示とか,契約の錯誤無効を有効前提の詐欺取消よりも先に書くとか,違法性が構成要件より先に論じられてはならないとか,書く順番で論理性を表す場合はかなり大事。
書き順→早く書くとしても,正しい書き順で文字を書けば,読めない字にはならない。

【maso注】
これも大切な視点です。そこにも理解がでるからです。cf.「再現答案を見るとき


 (9) 主張反論問題は,主張をもっとも厚く書くこと。主張を厚く書いて初めて議論が有益なものになるから。主張が薄い議論は白熱しない。


2 問題の読み方について
(1) まず配点をチェック。次に設問。設問は2度読み,書くべきことをマーク。それから問題文を1度じっくり。
例)2007刑法で問題文の読み落としによるミスが多発したらしい。こういうこともあるから注意する。
事後の注)1度さらっとよんで,2回目できちんと読む,という方法を試したが私には合わなかった。これは個人的な要素が強いと思います。

【maso注】
問題文の読み間違え,(設問の条件などの)読み落としは致命傷になります。設問が長い場合には,文節を区切るなどして,与えられた条件や論述の対象を明確にしましょう。


 (2) 問題文の「なお」書の部分は超重要だから落とさない。「なお」は文脈とは関係ないが特に付け加えたいときに使う接続詞だから,試験委員は何かのメッセージを発している。
例)2006民事系第1問(会社法)の1つ目の「なお」は,吸収分割を論ずるなという趣旨。2つ目の「なお」は,利益相反を論ずるなという趣旨と読める。


3 答案構成について
(1) 30~40分以内で終えるのが原則だが,混乱している状態での見切り発車はダメ。その場合は書くのを5枚に減らしてもいいから混乱は解消すべき。

【maso注】
普段の学習で,制限時間内(原則30分)での答案構成を練習して危機管理力を高めておきましょう。筆記速度などからみて,最大40分まで答案構成しても大丈夫だとしても,普段は30分厳守で練習しておくのが良いと思います。


 (2) 答案構成上考えつかなかったことに関して,書いている途中に考えついても,答案がぐちゃぐちゃになる場合には諦めることも大事。

【maso注】
答案構成後,論述の際に閃いたことを書くのはバクチ行為です。しばしばあると思いますが,「自分はひょっとしたらすごいことに気がついてしまったのではないか。これこそ真の出題趣旨ではないか」という閃きは大抵間違っているので注意が必要です。一度冷静に考え直してみて,うまく書けそうにない場合は,それを書くのは避けておくほうがよいでしょう。


 (3) 答案構成に書いたらチェックを入れて書き落としを防ぐ。思いついているのに書き忘れるのは痛い。

【maso注】
私もやっていますし,研修所の同期(新司法試験超上位合格+任官)も普段の起案でこれをやっています。


 (4) 答案構成に文章は書かず,キーワードのみを書く。時間節約のため。

【maso注】
文章を書いておかないと不安に感じる方もいるかもしれませんが,キーワードさえあがっていれば書けます。


4 表現について
(1) 人に読んでもらうモノである,ということを忘れない。
(2) 誤字はしない。できるだけ訂正もしない。論理的に考えながら書けば必然的に訂正は減る。混乱しているから訂正が生じる。なお,訂正をする場合は美しく。
(3) 日本語を正しく,わかりやすく。
・主語と述語を対応させる。
・文章は短く。切れるところはきる。
・接続詞を正確に使う。
→「そして」を使わない。文と文のつながりの論理性が曖昧になるから。どうしても適切な接続詞が見つからない場合にのみ使用。
・二重仮定の禁止(「~だとすれば,~だとすれば,~となる。」)

【maso注】
接続詞や言い回しで,論述全体の印象が変わってきます。特に接続詞は,論理関係を明確にするためにも意識的に使うべきです。cf.「流れのある答案を目指して


 (4) 語尾は言い切る。
「~といえよう」とか「~だろう」等は評論しているわけではないのだからダメ。論文は,設問に対する自分の意見を聞かれているのだから,断定的な表現を用いるべき。

【maso注】
これも大切なことです。「あなたの見解を述べなさい」との問いに対して第三者的な視点で回答したり,「当事者としてどのように主張するか」との問いに対して,反対の主張を同バランスで取り上げて第三者的立場から比較衡量するような論述をすれば,それだけで減点されるでしょう。いかなる立場から論ずるのかを良く考えて書き始めるべきです。敷衍していうと,法解釈については「~と考える/考えるべきである」ではなく,「~と解する/解すべきである。(「私は法律の文言をそのように解釈・理解する」という意をこめて)」と書く,などのルールを決めたらそれをしっかり守りましょう。また,結論を述べるところで,「したがって/よって/以上により,~と考える。」と自分の意見のように書く答案が散見されますが,結論は結論として,「したがって/よって/以上により,~(であ)る/~ない/」と書くべきです。


 (5) 法律用語は漢字も含めて特に正しく使う。これを間違えると致命的。あと,できるだけこなれた表現を使う。
法律用語例)到来と経過,自己統治と自己実現,廃止の「廃」,遮断の「遮」等
こなれた表現例)窃取(窃盗行為による財物移転)/強取(強盗行為による財物移転)/詐取(詐欺行為による財物移転)/喝取(恐喝行為による財物移転)→甲はAに「20万円よこせよ。ひどい目にあうぞ?」と申し向け,これを畏怖させ,20万円を喝取した。

【maso注】
専門用語をしかるべきところで正確に使えるかどうか,という点にも実力が現れます。法律用語には,当該用語の持つ意味をすべて含んだまま別の言葉で言いかえるのが難しいものが多いです。それぞれが厳密な定義を持つ用語ですから,内容を理解した上で正確に使いましょう。こなれた表現は,合格者の再現答案や答案練習をする過程で友人の答案を読んで,自分の論述にも取り入れていくといいと思います。


 (6) 字は,少なくとも初めの1頁だけはできるだけきれいに書く。印象はそこで決まるから。


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theme : 司法試験・資格試験・語学試験
genre : 学問・文化・芸術

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Author:maso
弁護士(63期)。いわゆる大手渉外法律事務所で働いています。

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