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理由づけ

答案を拝見する中で気がついたことをもう少し書きたいと思います。

私が新司法試験の法律答案を書くにあたって意識すべきと考える3つの理由づけについてです。

それは,答案を書く順番に則していうと、
①問題提起
②規範定立
③あてはめ
それぞれについての理由づけです。

一般に,受験生の間で「論証」とは,②規範定立における規範導出作業のことであると捉えられていると思います。答案を見ていても,「論証=②」であると,イコールで結びつけて考えている人が非常に多いのではないかと思いました。たしかに、②規範定立が答案の中で法律論の論述として重要性を持ってくるのは間違いありません。しかし,以前のご質問(「Q&Aのまとめ1」参照)にお答えしたとおり、論証が求められるのは規範定立の場面のみではありません。①問題提起と③あてはめの場面でも同様に「論証」することが必要です。ここでいう論証とは、端的にいえば理由を付すということです。

以下で具体的に考えていきます。

第1 ①問題提起について

問題提起については、「どうしてそこが問題となるのか」を書くことが必要です。当然にできていると思われると思いますが、落とし穴があります。例1の問題提起を見てください。過去に新司法試験で出題された論点です。

【例1】

  • 「甲のAに対する取り立て行為については,いわゆる権利行使と恐喝が問題となる。」
  • 「AはBに所有権を対抗することができるか、545条1項但書の意義に関連して問題となる。」(※B→C→Aと所有移転。その後Bが契約を解除したものとします。)
一見、普通の論述に見えますが、これは問題提起ではありません。なぜなら読み手(採点者)には,書き手がなぜその法的問題を論じるのか、論理に飛躍があるため分からないからです。読み手(採点者)の視点からより正確にいえば「確かにその論点は問題となるのだけれど、どうして書き手は問題となると考えるのだろうか。その思考過程を書いてもらいたい。」と思うのです。

「問題となる」と書くことで問題提起をしたように錯覚してしまいがちです。では例1の論証はどのように改善したらよいでしょうか?例2を見てください。

【例2】

  • 「甲はAに対して〇万円の損害賠償債権を有している。そうすると、本件の取り立て行為は、恐喝罪の構成要件にあたるとしても、権利行使として行われたものとして違法性を欠くのではないかが問題となる。」

  • 「Bの解除により法律関係は遡及的に無効となる。そうすると、Cから甲不動産を買い受けたAは所有権を取得できないのが原則である。もっとも,解除権の行使は,第三者の権利を害する場合には認められない(民法545条1項但書)。そこで,Aが「第三者」にあたるかが問題となる。」

このように問題の所在に至るまでの思考過程をそのまま文章化することによって、読み手にも書き手の思考過程が伝わります。さらに具体的にみてみましょう。以下はその年に刑事系2ケタ上位で合格した方々の実際の問題提起部分の論述です。思考過程を示すことが、そのまま答案の読みやすさ、分かりやすさにつながることをお分かり頂けると思います。

【合格者A】

  • 「もっとも、甲は、Bから取立の委任を受けたものであり、委任自体は適法であるから、正当な権利行使として違法性が阻却されるのではないかが問題となる。」

【合格者B】

  • 「しかし、本件において、甲は、実際にAに対して交通事故に基づく120万円の不法行為債権を有するBから、債権回収の承諾を得た上で、本件請求行為を行っている。そこで、当該行為は、民法上の債権行使の一態様であって、正当行為(35条)となるのではないか、問題となる。」
以上のとおり、比較すればよく分かりますよね。「問題となる。」と書いたからと言って問題提起をしたことにはなりません。ご自身の論述が本当に問題提起になっているかどうか振り返ってみてください。

第2 ②規範定立について

規範定立については,「どうしてそういうルールを立てるのか」を書くことが必要です。みなさんがいままで散々「論証」として意識してきた部分ですから,①や③よりも大分意識されて書かれる方多いのではないかと思います。ただし、これまた先程の「問題となる」の例と同様に,論理の積み重ねを省略することがないように注意する必要があります。

コンパクトな論証を目指すあまり、理由づけを省略していきなり規範を書く例、規範を全く書くことなくいきなりあてはめを行う例が見られますが、絶対にやってはいけません。理由付けを省略した論証は、特に影響力の強い判例がある論点において判例の規範を理由なしに書く、という形で見かけます。

例えば、先程の平成19年の刑法の例でいうと次のようなものです。

Bの権利を行使したとして正当行為(35条)に該当するとも考えられる。そして、自らの債権の行使というためには、債権の範囲内であり、取立の方法が社会通念に照らして相当であるか否かによって判断すべきである。


ご存じのとおり、この論点(権利行使と恐喝)については、最高裁が「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする」と判断しています。読み手としても、判例を意識して記載したのであろうということは分かります。しかし、これは論証の体をなしていません。

この問題では、論述を通じて、いわゆる「権利行使と恐喝」という論点について、書き手がどういうルールを使って解決すべきと考えるのかを書くことを求めているのです。ですから、書き手としては、たとえ判例と同様の規範を採用するとしても、「私は,こういう理由から,判例の規範を使って解決すべきと考えます。」ということを書かなければなりません。具体的には、この論点を違法性の段階で考えるという立場を前提とするなら、「違法性の本質の理解(違法性は、法益侵害という結果無価値のみでなく、行為無価値をも考慮すべきもの)→ 手段の相当性を含めて社会的に相当といえる行為である必要がある。→ したがって、(判例の規範)」というように書いていくことが考えられます。

次に、規範を全く書くことなくいきなりあてはめる答案もたまに見かけますが、これはかなりマズイです。「~が問題となる。本件では〇〇(事実)である。したがって、・・・となる。」と書かれたのでは、書き手がいかなるルールによって事案を解決しようとしているのかが分かりません。あてはめる対象(ルール)なく事実を列挙しても,何の意味も持ちません。

「法律という誰もが認める一般的なルールがあって、その意味を解釈するとこうなる。そうすると、本件の事実関係の下ではこういう結論になる。」というように、自分の結論は法律から自然に導かれたものであり、単なる個人的な感想・意見ではないのだということを示さなければなりません。法律に書かれたことには従わなければならないという暗黙の前提がある以上、本件の結論はみんなで決めたルール(条文)から出てくるんですよという主張は極めて強力です。

以上のとおり、「本件を解決すべきルールはこれである」と示す作業は論述の核となる部分ですから絶対に省いてはいけません。答案は感想文ではいけないのです。

第3 ③あてはめについて

あてはめについては「具体的事実がどうしてその規範にあたるいえるのか」を書くことが必要です。巷では、あてはめを重視しようとか、ただ事実を列挙するだけでなく個々の事実の意味を評価して論述しよう、などといわれていると思います。具体的には次のように論証することを意味しています。例1をみてください。

【例1】
「事実aは、●●であるから(評価),●●である(抽象的な規範に該当する)。事実bは、●●であるから(評価)、●●である(抽象的な規範に該当する)。たしかに、事実cは、●●であるが(評価)、●●のため(理由)、●●である(評価)。したがって,(規範をすべて満たす)。よって,●●である(結論)」

例1のように、事実への法的評価を加える作業は、当該事実がなぜ規範にあてはまるといえるのか、具体的な事実が抽象的な規範にあてはまることを示し、両者を橋渡しをする作業です。しかし、これが難しいのです。受験生の典型的な失敗例は次のとおりです。例2を見てください。

【例2】
「本件では、事実a、事実b、事実cが認められる。したがって、(規範をすべて満たす)。よって・・・」

というように書いてあると,読み手(採点者)には、当該事実がなぜ規範に該当するといえるのか、書き手の思考過程が全く分かりません。読み手側で、書き手の意思を忖度して、こういう理由なんだろうな、と補って採点するわけにはいきません。そうすると、答案のあてはめ部分について、(1)規範に当てはめるべき事実を正確に把握しているか、(2)規範に当てはまる理由(事実への評価)が述べられているか、という2つの観点から点が振られている場合、(2)事実への評価に関する点を全て失ってしまうことになります。さらに、評価の理由が書いてない文章には、論理の飛躍があるので書き手は論理的思考力に疑義が生じ、ひいては答案全体の印象も悪くなる可能性があります。

先日書いたように、たとえ書き手が頭の中で例2の「総合考慮」を行ったとしても、その過程を文章で示さなければ読み手には伝わらないのです。例1及び2のように骨格だけを抜き出してみると、まさか例2のような論述をすることはないだろうと思われるかもしれません。

しかし、これが実際に文章になると例2の失敗パターンで書いてあるものであっても途端に欠陥が見え辛くなるのです。以下の例をご覧ください。

【例2の失敗パターンで書かれたもの】

「因果的寄与が除去されたといえるためには,・・・(中略)、自らの影響力を除去する必要があるというべきである。(中略)・・・本件共犯行為は,実際にAを恐喝し詐欺する行為が専ら甲によって行われたものである。また、乙は、不良仲間で後輩格である甲に対し、「警察沙汰になったら、おれが迷惑することを忘れるな」と強く念押しした。さらには、乙はその後のAとの交渉にも立ち会っていない。したがって、乙が本件行為に及ぼした影響は、完全に除去されたものというべきである。」

それでは同じあてはめを刑事系超上位合格者が行うとどうなるでしょうか。実際の再現答案から引用します。

【刑事系超上位合格者による実際のあてはめ】
※赤字部分などは読みやすさの便宜を考慮して私が追加しました。

「因果的寄与が除去されたといえるためには、・・・(中略)、自らの影響力を除去する必要があるというべきである(規範)。(中略)・・さらに,そもそも,本件共犯行為は,実際にAを恐喝し詐欺する行為が専ら甲によって行われたものであり(事実摘示)、乙の存在は、甲を精神的に威勢づけるとともに、二人掛りでAと交渉することで同人に対する影響力を強める効果があった(評価)。しかるに、乙は、不良仲間で後輩格である甲に対し、「警察沙汰になったら、おれが迷惑することを忘れるな」と強く念押ししたのであり(事実摘示),これは、甲に対する精神的な助成を除去するとともに、かえって、甲が以後の犯罪を継続することを強く抑制する効果すらある発言である(評価)。また、乙がその後のAとの交渉にも立ち会っていない以上、Aに対する影響力もない(評価)。そこで、乙が本件共犯行為に及ぼした影響は、完全に除去されたものというべきである(結論=規範への該当性」)。

このように比較してみれば、どちらが説得的かは一目瞭然ですよね。しかし、例2の失敗パターンはそれだけをみると一見問題ないように思える点がやっかいです。

例2の失敗パターンに陥っている答案は、私が見る限りとても多いと思います。あてはめをしっかりやるというのは相当に難しいですが、普段の学習で力を割いていない人が多いように思います。元々センスがある方でも一定の練習量をこなすことが必須です。あてはめなんてその場で何とかなる、という考えはやめて、意識して論述をつないでいかないと、知らず知らずのうちに事実列挙型(例2の失敗パターン)に陥ってしまいます。

また、あてはめの箇所は本当に規範を理解しているかを見られる場面でもあります。具体的な事実を規範に当てはめる事ができるということは、翻って規範の内容を正確に理解し使いこなすことができているということを意味するからです。あてはめが不十分で、採点者にこの人は抽象的な規範だけを覚えているのではないか,と思われるとかなりマズイです。(たとえそうではなくても)単に覚えた論証を吐き出しているだけの答案と見られてしまうのは、あてはめが不十分であるからだろうと思います。
あてはめの論証は規範の論証とセットで同じくらい重要です。絶対に軽視しないでください。

長々と書いてしまいましたが、答案作成にあたっては以上のことを強く意識すべだと私は思います。理由づけを丁寧に書くと文章がくどくなってしまうこともあります。しかし,だからといって理由づけを放棄して書いてもよいわけではありません。まずは厳密な論述の型を身につけてそれを場合に応じて崩していくのと、最初から型を無視して自己流で書くのとでは答案の説得力に雲泥の差が出ます。
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