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【特別連載・科目別に気をつけるポイント・民法】byN氏

民法について。

※特別連載の説明,目次は「こちら

(1)科目特性
①要件事実の理解及び整理が必要(2007年採点実感)。要件事実を間違えた場合には,合格がかなり遠のく。特に,規範的要件を理解し,事実を分析し,その上で正確にあてはめが重要。あてはめで分析力・要件の理解の程度を表現する。(例:2009年「過失」,2010年「正当事由」など)
②訴訟物,当事者,時系列を中心に確認する必要がある。特に,時系列に関しては,必ず答案上で指摘することが求められる。実際に2007年は,契約の締結,解除の時点をいつとするか,等といった考慮が不可欠だった。
③請求相互の関係を整理し,正確に記述することが求められている。たとえば,有権代理→表見代理→無権代理人の責任など。
④家族法が出た場合には,条文をたくさん引用する必要がある(2008年第2問優秀答案)。
⑤民法は,実は論理性がかなり重要。

(2)注意リスト
① 次の思考パターンを使う。
ア 問いに対して適合的な請求権(訴訟物)を定立する。
(1)その後,端的に要件事実を整理して単にあてはめていく。
(2)抗弁
(3)再抗弁
(4)結論
という流れで検討する。
イ 解釈すべきところは,条文の趣旨から検討していく。
② 主張の整理整頓
  ➥請求相互の関係をきちんと把握したうえで,論じる。
   例)錯誤→停止条件意思表示→詐欺→解除
     反論として,重過失,
     有権代理→消滅したとしても表見代理→授権なくても無権代理(→追認?)
   巻き戻しの法律関係の把握もする。
③ 不当利得はどの要件の問題かを明示して考える。
④ 裸の事実→当事者の気持ちになって請求を考えて要件にあてはめる。その際に要件・効果を含めた要件事実を正確に記す。先に列挙するとわかりやすいとの指摘。
  ➥善意・悪意・過失の対象,判断時期も含めて。
   過失は,①調査義務が生ずる事実,②その内容,③それをしていない事実を書く
⑤ 1行目に条文を摘示する意識。条文解釈が基本であることを忘れがち。
⑥ 判例の射程をきく問題
  ➥射程外だという議論をするときは,判例の判断のポイントを要約し,本件は,それとどこがなぜ違うのかを意識して書く。
⑦ 反論問題では,否認と抗弁を意識。反論の合理性を根拠づけ,問題の所在を示す必要性。同じ事実を違う評価が否認をする際にはかみ合う議論になる。
⑧ 論理的に書く。ぐちゃぐちゃにならないように。
⑨ 複雑でもあきらめない。考えるのをやめた瞬間にひどいものが出来上がる。


(3)参考
2010年新司法試験 要件事実の予想
①時効,②代理,③履行遅滞,④代物弁済,⑤相殺,⑥瑕疵担保,⑦請負

1 総論
・請求原因事実とは,「訴訟物である権利または法律関係を発生させるために最小限必要な事実」である。
  ➥骨だけ。
・抗弁とは,請求原因と両立しつつ,請求原因から発生した訴訟物たる権利の発生の障害となり,権利を消滅させ,または権利の行使を阻止する事実である。
・再抗弁事実とは,抗弁と両立し,抗弁の発生の消滅・変更を基礎づける事実である。さらに被告が,その再抗弁事実から発生する権利の否定などの主張が再再抗弁事実となる。
・対抗要件の抗弁に注意(新司平成18年におけるミス)
・「~に基づく」を忘れてはならない。
・抵当権設定当時あるいは代物弁済の当時の「所有権の帰属」の摘示のミスをしない。

2 各論
(1)時効の要件事実
*Kg
1.ある時点で占有していたこと
2.1の時から20年経過した時点で占有していたこと
3 援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたこと

なお,短期取得時効は
1 ある時点で占有していたこと
2 1の時から10年経過した時点で占有していたこと
3 占有開始時に善意であることについて無過失であること(無過失の評価根拠事実)
4 援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたこと

注意:明文の要件からこれを導けるか確認。
 186条1項 暫定真実
法規によって前提事実なしに無条件に一定の事実を推定することによって,その規定の要件事実の不存在の証明責任を相手方に負わせる立法技術
➥但書に読み替えられる。
 186条2項 法律上の事実推定
 「甲事実があるときには乙事実あるものと推定する」との定めがあるとき
 ➥法律上の権利推定――「甲事実あるときは,乙なる権利があるものと推定する」との定めがある場合で,Aの発生原因となる事実は乙ではない
*法律上の事実推定と,暫定真実の違い
  →同一要件事実内か否かで区別
   例 要件事実ABCで,Dという効果が発生する場合
    法律上の推定(外) X事実がある場合にはAと推定する。
    暫定真実(中) Aという事実がある場合にはBもあると推定する。


*E
1 その性質上所有の意思のないものとされる占有取得の権原(他主占有権限)
    ➥たとえば,賃貸借契約,使用貸借契約など
2 外形的客観的に見て占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される占有に関する事情を示す具体的事実(他主占有事情)
    ➥賃料の支払いとか。
注:判例(最判S45.6.18)・通説は,「所有の意思」の有無は,占有者の内心の意思によってではなく,外形的客観的に決せられるべきものであり,その判定基準は,占有取得の原因(権原)の客観的性質によるとする。
  ↓
すなわち,外形的客観的にみて,真の所有者であれば通常取るべき行動を取ったかどうか。例えば,固定資産税の支払いや,移転登記請求をしていたなど。
E2の事情のハードルは高い。

(2)代理の要件事実
1.代理人Aと相手方間での法律行為
2.代理人が本人のためにすることを示したこと(顕名)
3.本人が代理人に対し1.に先立ち代理権を授与したこと(代理権授与)

[109条表見代理]
*Kg
1.代理人Aが相手方Xとの間で売買契約を締結したこと
2.Aが売買契約の際,本人Yのためにすることを示したこと(顕名)
3.本人Yが相手方Xに,売買契約に先立ちAに代理権を授与した旨を表示したこと
*E
1.代理権の不存在につき悪意,または知らなかったことについての過失評価根拠事実
*R
1.有過失の評価障害事実

[110条表見代理]
*Kg
1.代理人Aが相手方Xとの間で売買契約を締結したこと
2.Aが売買契約の際,本人Yのためにすることを示したこと(顕名)
3.代理人の1.の法律行為以外のある特定の事項についての代理権の発生原因事実(基本代理権)
4.相手方が代理人の1.における代理権の存在を信じたこと
5.相手方が代理人の存在を信じたことの「正当な理由」の評価根拠事実
注:善意・無過失は110条を主張する側(第三者)が立証。
*E
1.正当な理由の評価根拠事実

[112条表見代理]
*Kg
1.代理人Aが相手方Xとの間で売買契約を締結したこと
2.Aが売買契約の際,本人Yのためにすることを示したこと(顕名)
3.本人Yが売買契約に先立ち代理人Aに代理権を授与したこと
4.相手方Xが代理権の消滅を知らなかったこと
*E
1.原告が代理権の消滅を知らなかったことについての過失の評価根拠事実
注:条文の構造を重視し,第三者が代理権の消滅について善意であることを主張し,本人が第三者の有過失を立証する。

(3)登記保持権限の抗弁。発生障害の抗弁。
1.被担保債権の発生原因事実
   ∵ 抵当権は被担保債権と無関係では発生しないから。付従性がある。
2.原告が被告との間で1.の債権を担保するため抵当権設定契約を締結したこと
3.原告が2.当時その不動産を所有していたこと
   ∵ 物権契約だから,その処分には所有権が必要。
     権利自白の成立は?
     確かに現在の所有権の所在については権利自白が成立しているが,それよりも前の段階に所有していたことはわからない。
     →この要件は必須。
4.登記が2.の契約に基づくこと。

(4)履行遅滞の要件事実
1.履行遅滞に陥っていること
2.履行しないことが違法であること
  ➥同時履行の抗弁を消さないといけない。忘れがちなので注意。
3.催告
4.催告後相当期間経過
5.解除の意思表示

(5)相殺の要件事実
相殺の要件は
1.同一当事者間に債権が対立すること
  →自動債権の発生原因事実をいえば,それでOK
2.対立する両債権が同種の目的を有すること
  →この要件は,自動債権の発生原因事実が顕出した段階でおのずと明らかである。
3.両債権が共に弁済期にあること
  →受働債権については,相殺の意思表示をする者が期限の利益を放棄することができるのであまり問題にならない。問題になるのは,自動債権の弁済期。
4.相殺を許さない事由がないこと
  →基本的には法的評価の問題であるので要件事実的には問題とならない。唯一注意を要するのは,自動債権に付着する抗弁権の問題(※)
5.相殺の意思表示をしたこと。
(1~4は相殺適状にあること,でまとめられる。)
  ↓
したがって,
①自働債権の発生原因事実
 必要とあれば,自動債権の弁済期の到来
 必要とあれば,自動債権に付着する抗弁権の発生障害事実又は消滅原因事実
②受働債権につきY1がXに対し一定額について相殺の意思表示をしたこと
を主張立証しなければならない。

注意:自動債権に同時履行の抗弁権が付着している場合
→判例通説によれば,抗弁権の存在効果として相殺が許されないことになるから,①の自動債権の発生原因事実の主張自体からその債権に抗弁権が付着していることが明らかとなる場合は,抗弁権の発生障害または消滅原因となる事実をも併せて主張しなければ,主張自体失当となる。
→さもないと,同時履行の抗弁権の意義が没却される。

(6)代物弁済の要件事実
類型別の見解
1.債務の弁済に変えて動産の所有権を移転するとの合意がされたこと(代物弁済合意)
2.債務者が1.の当時,その動産を所有していたこと
   ➥忘れがち。所有権が移転しないといけない。
3.1の合意に基づきその動産が引き渡されたこと
   ➥債務の消滅原因としての代物弁済は,対抗要件の具備まで主張することが必要

(7)瑕疵担保の要件事実
(売買契約に基づく代金支払い請求の抗弁)
1.売買契約締結時,目的物に通常の人からの買主となった場合に普通の注意を用いても発見することができない瑕疵があったことを基礎づける具体的事実
2.YのXに対する解除の意思表示

これに対して
悪意・過失・除斥期間の再抗弁がある。

注:「隠れた」の意義
一般的要件=通常の人が買主ならわからない瑕疵であること(抗弁)
個別的要件=当該買主がどうか,ということ(再抗弁)

(8)請負の要件事実
(請負契約に基づく請負代金(報酬)請求権)
1.XがYとの間で,請負契約を締結したこと
2.Xが上記請負契約に基づき仕事を完成したこと
➥仕事完成義務が先履行
    引渡に関しては,同時履行の抗弁に対する,再抗弁に当たる。

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genre : 学問・文化・芸術

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要件事実について

N氏さん

こんばんは、変わらずいつも記事を楽しみにしています。

また質問させてください。

新司法試験の民法に占める要件事実の割合というのはどういう傾向だと考えておられますか。

私自身去年から悩んでいまして、今年小問形式で聞かれていたの若干ウエイトは下がるのかなとも思いつつ、いやいや大切じゃないかと思ったりと悩んでいます。

要件を覚えるのも実定法のものを基礎に並び替えるのか、要件事実としてまとまっているのにするのかも悩み、結局基本である実定法の要件ならまちがいないと考え、それを覚えるようにしています。

よかったらいろいろとお考えを聞かせていただけたらと思います。

Re:要件事実について

質問ありがとうございます。

>新司法試験の民法に占める要件事実の割合というのはどういう傾向だと考えておられますか。

難しい質問ですね。笑 完全に私見ですが、思うところを述べることにします。

私は、「割合」というのは考えたことはありませんが、どのような形であれ、毎年必ずと言ってよいほど出題されている分野(こういっていいかはわからないですけど)ですので、「超重要」だと思っています。
科目特性のところで「要件事実を間違えたら合格は遠のく」と考えたのは、超重要だからゆえにみんなが勉強してくるだろうから、相対評価として沈んでしまうのではないか、と危惧したのが理由です。

来年度も出るかはわかりませんが、超重要であることは変わらないんじゃないでしょうか。要件事実は、民法が分かってないと正確に対応できない上に、何が主要事実かどちらに立証責任があるかなど、民事訴訟法の分析でも当然重要になるわけですから。


また、民法と要件事実をどちらを基礎においたらよいか、ということを迷っていらっしゃったようですが、私もゆっきーさんと同じく民法を基礎においていました。その理解を基に、自分で要件事実を「考える」のが基本だと思います。(その意味で要件事実の「暗記」には抵抗があります。)

そのように考えるようになったきっかけは、2年生の時に読んだ『要件事実論30講』(初版)の第4講の「要件事実論と民法」というタイトルの記述にあります。そこには「要件事実論の中味は、民法実体法の分析から得られる原理より指導されて初めて確定されることが求められるものであり、けっして、その逆ではないというべきであろう」と書かれており、なるほどv-21と思いました。何が主要事実かを決めるのが民法(条文+解釈から導かれる要件)であって、それがわからないと訴訟上の立証責任も何もありませんからね。

という感じです。
以上でお答えになるでしょうか。。。


No title

N氏さん

回答ありがとうございました。

難しい質問ごめんなさい。

要件事実について自分なりの方向性を見つけることができました。

既に要件事実でできあがってるものをおぼえるのは個人的にどうもしっくりこなかったので、その感覚が間違っていないのではと感じて嬉しかったです。

これからは迷わず実定法上の要件を中心に押さえていこうと思っております。

いろいろありがとうございました!

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弁護士(63期)。いわゆる大手渉外法律事務所で働いています。

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