スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

基本から考えてみる

基本的知識・理解と論証の流れさえ押さえれば,論点において規範部分の論証に対応できるという例を示せたらいいなと思い,【最高裁平成11年11月24日大法廷判決民集53巻8号1899頁(抵当権に基づく不法占拠者に対する明渡請求)】と【最高裁平成17年3月10日第一小法廷判決民集59巻2号356頁(抵当権に基づく妨害排除請求)】の事例を例にとって、やり方を考えてみたいと思います。

※以下の論証例は,分かりやすくするために長めになっています。実際の論述では,あてはめにあてる事情の分量や時間との兼ね合いで,規範までの論述の分量は決まってきますので,ケースバイケースで論証を長くしたり,コンパクトにしたりすることになります。




【ここで使う基本的知識・理解】
抵当権は,(1)競売手続において実現される抵当不動産の交換価値を把握し,(2)被担保債権の優先弁済を受けることを内容とする物権であり,(3)不動産の占有を設定者から抵当権者へ移転せずに設定されるものである。したがって,(4)原則として,抵当権者は抵当不動産の所有者による不動産の使用・収益への干渉はできない。






Q1-1.抵当権に基づく妨害排除請求(不法占有者)
【基本的知識・理解を書く】

【規範定立】
しかし,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ,抵当権者の優先弁済権の行使が困難となる状態がある場合には,(1)(2)への侵害が認められ,これを抵当権侵害と評価することができるから,抵当権に基づく妨害排除請求が許されると考える。

※上記の規範には,判例の文言をそのまま使っていますが,たとえ判例の規範がうろ覚えでも,抵当権の基本的な理解から,権利の核となる(1)と(2)の要素への侵害があること=抵当権侵害となる要件であると考えれば足ります。




Q1-2.占有権限のある第三者のケース
【基本的知識・理解を書く】

【規範定立】
(抵当権者は,抵当不動産の所有者の使用・収益への干渉はできないため),
抵当不動産の所有者には、抵当不動産を使用又は収益するにあたり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されている。
したがって,抵当不動産の所有者であっても,抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないから,(①占有権限の設定に競売手続妨害目的が認められ,)②その占有によって抵当権の交換価値の実現が妨げられて,抵当権者の優先弁済権の行使が困難となる状態がある場合には,抵当権に基づく妨害排除請求が許されると考える。

※長いですが,覚えるべきところはほとんどありません。所有者の適切な維持管理は、基本的知識から導かれることですし,侵害要件②は抵当権の本質から出てくるものです。唯一知らなくてはならないのは,平成17年最判がこのケースで主観的要件を掲げたということでしょうか。
ただ、平成17年最判が主権的要件を掲げたということを,知識として知っているにこしたことはないのですが,仮にこれを知らなくても,Q1-1の流れで客観的要件のみを挙げて,そのあてはめの中で,競売手続妨害目的を持った占有者による占有が交換価値の実現妨害等につながることを論証してあれば,減点はないと思います。
※なお,主観的事情は,客観的要件の判断の中に吸収させて判断する方が,事案に柔軟に対処することができるかもしれません。たとえば,問題文を読んでいて,妨害目的の認定が難しいなと思ったら,規範定立の際に②だけを挙げて,判断の中で妨害目的を検討し,妨害目的が小さく(あるいはほとんどなく)ても客観的要件を満たすのだということを論証して書いていけるからです。




Q2.自己への直接引渡しの可否
【基本的知識・理解を書く】

【規範定立】
(抵当権者は,抵当不動産の所有者の使用・収益への干渉はできないため),
抵当不動産の所有者には、抵当不動産を使用又は収益するにあたり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されている。
したがって,抵当不動産の適切な維持管理が期待できない場合に限って,例外的に,妨害排除請求の目的を達成するために,直接自己への不動産の明渡しを求めることができると考える。

※これも覚えるところは特別ありません。しいて言えば「適切に維持管理」というタームでしょうか。




Q3.賃料相当額の損害賠償請求の可否
【基本的知識・理解を書く】

【基本的条文】 ※基本的知識・理解(4)の裏付け。
果実の取得は,被担保債権の債務不履行後の物上代位あるいは担保不動産収益執行によって初めて認められ,それ以前には及ばない(371条)。

【Q2の帰結を援用】
また,直接引渡し後の占有は,使用利益の獲得を目的とするものではなく,不動産の維持・管理を目的とするものであるから(管理占有),これを根拠とすることもできない。
したがって,抵当権者は賃料相当額の損害を被ったとはいえず,損害賠償請求は認められない。

※この後に不法行為に基づく損害賠償請求で対応できるということを書いてもいいかもしれません。

theme : 司法試験・資格試験・語学試験
genre : 学問・文化・芸術

comment

管理者にだけ表示を許可する

No title

こんにちは。未修1年の者です。
ブログ読ませていただきました。
非常に有益な情報を書いていただきありがとうございます。
質問なんですが、基本的な知識とそれ以外の区別はどのようにされていましたか?
その区別がなかなか難しく、悩んでいます。

No title

Tさん

コメントありがとうございます!
お返事が遅れてすみません。

基本的知識とは,重要条文の趣旨・要件・効果(※争いがある場合は基本的に判例による),重要基本判例,法律用語の定義,法の仕組み,個々の制度の仕組み,制度趣旨,制度の沿革等のことであると考えています。なぜかというと,これらは法律家であればだれでもが前提としている事柄であって,ほとんど争いのない部分(みんなが,まあそうだよねと考える部分)だからです。

※法律答案が,採点官を一応説得させるための文書であるとすると,争われない(本当にそうかな?と突っ込まれない)というのはかなり強みです。

したがって,基本的なものかどうかのメルクマールは,「誰もが(一応の)前提にしているかどうか」ということになるのかなと思います。

受験対策的な観点からいって,論証にそれらがどう生きてくるかというと,たとえば,単純化した例ですが,「~の趣旨は,〇〇である。」→「そうだとすれば,「××」という文言は,~と解すべきである。それが趣旨に沿う。」とか,「〇〇の制度は,~というものである。」→「このような制度の下では,その制度の目的に沿うように第三者の保護に重点を置いてを考えるべきだ。具体的には,~」というようにあたかも公理から自然に導いたかのように書けるというメリットがあります。

また, たいてい,条文はある制度の理念の下でまとまってグループをなしており,そのグループ内の条文は,その制度の趣旨を達成するために制定されています。そうだとすれば,グループ内の条文の解釈については,みな同様にその制度趣旨に合う形で解釈してやればよいということになり,論証の記憶すべき部分を大幅に削減できます。
さらに,ある小規模な制度の趣旨を達成するために小さな条文グループが存在し,中規模の制度の趣旨を達成するために小さな条文グループ同士があつまって中規模の条文グループを構成し,・・・と考えていくと,ひいては当該法の目的を達成するために全体の条文が適切な位置に配置されていることが分かってきます。
そうすると,仮に考えたこもない論点が出てきたとしても,関連条文が構成する制度趣旨に合う形での解釈を展開してやればよいことになります。

最近,受験勉強中の方の答案を見ることが多いのですが,上記の基本的部分の理解があやふやだと,読んでいてかなり危なっかしい印象を受けます。逆に,基本が正確で,かつ思考過程が表れている答案は,難しいことを一つも書いていなくても,読んでいてもつっこみようがないため,かなり説得的に感じます(いわゆる筋が通っている)。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

ご質問ありがとうございます。
こちらで回答させていただきます。

第1 質問1について
論点と根本概念の対応関係を知ることに意味があるのではなくて,考えていくことに意味があると私は思います。
それは,どうやったら論点を根本概念から論証して処理できるかを,自分で考えていくということです。
たとえば,既存の論点として,条文の文言解釈として問題となる論点を学習するのであれば,①どうしてその条文の文言解釈が問題になるのか,その条文はどのような制度に関するものでいかなる趣旨で設けられているものなのかといったことを,基本書や百選の解説等あるいはコンメンタール等を参照して理解し,②その理解したところに従って当該論点を論証するとどうなるかを考え,実際に書いてみる,③その過程で「要するに,この論点はこういう問題で,この制度の趣旨から考えればこういう解釈になる,と書けばいいのだ」ということを理解する,④試験前に,③で理解した考え方を再度確認することによって,自分の理解に従った論証を書けるようにする,というステップになるでしょう。
そういった論点学習を心がけて学習していく中で,論証のコツ(考え方)がつかめると思います。

第2 質問2について
グループ分けは,編,章,節・・といった条文の構造そのものであったり,何かの制度であれば,それらをまたいで,あるいは離れた位置にある条文同士が関係をもってくることもあります。条文がどういうグループを構成しているかは,条文の目次等を見たり,基本書等のある制度が説明されている箇所で引用されている条文をチェックしたりして,理解していけばよいと思います。

第3 質問3について
開始直後に,まず,設問を正確に読むということが大切です。何を聞く問題かによって,どこにポイントを置いて読んでいくかが変わってくるからです。また,新司では,たいてい,問題文に段落番号がふってありますから,そこに蛍光ペンでマークして,読み進めつつ,その左側に見出しを簡単に書いていくという方法もおすすめです。長い問題文も読みやすくなりますし,読み直すときににアクセスが早くなります。
あとは,出てくる日付,問題になりそうな箇所,あてはめに使えそうな箇所は,読みながらチェックしていくと,あとから探す手間を省けます。
事案を早く把握するには,当事者やそれに関する法律関係を書いた図を書いていくことが一番ではないかと思います。

第4 質問4について
条文を探そうとするとき,その法律の条文目次が頭の中に浮かぶように,勉強過程で条文が出てきたら,逐一六法を引き,条文を実際に読む習慣をつけることだと思います。遠回りのようで,これが一番の近道だと思います。そうする過程で,条文がその法律でどのように配置されているかを理解しておくことが大切です。条文を最初から最後まで一気に素読してみるのも,法律における条文の構造を把握するにはいい方法だと思います。主に行政法,民法,会社法などの,複数人間の法律関係を論じたり,法的手段を考えたりする科目では,法律効果から条文を探すという方法が有効です。たとえば,原告は〇〇したいといっている→そのためにはここの法律関係の効力が否定できればよい→法律関係をなくす法律効果をもたらす手段としては何があるか→その条文の要件は・・というように考えていくということです。

第5 質問5について
新司法試験の過去問,特に刑事系の問題を使って練習するのが一番よいかと思います。その年の再現答案集などを見て,試験委員に評価されている答案がどのようなあてはめをしているかを知り,実際に同じ問題を自分で書いてみて,自分のあてはめと比較してみるとよいと思います。再現答案でイメージをつかんだら,あとは実践あるのみです。
ゼミ等を組まれている場合には,友人の答案を見る機会があると思いますから,そこで友人が自分よりうまいあてはめをしているなと感じたときは,どのように問題文を見ていったら自分もそういうあてはめができたかを考えてみるとよいと思います。また,その友人に,どうしてその事情を使ったのか,事実の評価をするときに気をつけていることはあるか等,どんどん質問して,自分の論述にもそれを反映できるようにしていったらよいのではないでしょうか。

本当に、ありがとうございました

修習前のお忙しい中、アドバイスをしてくださり、本当にありがとうございました。是非、実践をさせていただきます。maso様、修習、ガンバッテください!! こちらも、勉強、ガンバリます。

No title

kkさん

ご質問ありがとうございました。
お互い頑張りましょう!
08 | 2017/09 | 10
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

maso

Author:maso
弁護士

maso on Twitter
カテゴリ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

masoブロ カウンター
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。