スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

理由づけ

答案を見させてもらう中で気がついたことを,もう少し書きたいと思います。
私が新司法試験の法律答案を書くにあたって意識すべきと考える,3つの理由づけについてです。

それは,答案を書く順番に則していうと,
①問題提起
②規範定立
③あてはめ
それぞれについての理由づけです。

一般に,受験生の間で「論証」とは,②規範を導出する作業のことであると捉えられていると思います。答案を見ていても,「論証=②」と,イコールで結びつけて考えている人が非常に多いのではないかと思いました。
たしかに,②が答案の中で法律論の論述として重要性を持ってくるのは,間違いありません。
しかし,前にご質問を頂いた際の解答(「Q&Aのまとめ1」参照)としてお答えしたとおり,論証が求められるのは,規範を出す場面だけではありません。
①と③でも同様に,「論証」することが必要だと思います。
端的にいえば,一言でよいので理由を付すということです。

以下で具体的に考えていきます。




第1 ①問題提起について
①については,「どうしてそこが問題となるのか」を書くことが必要です。
たとえば,過去に新司法試験で出題された論点を使って例をあげれば,

【例1】
ア「甲のAに対する取り立て行為については,いわゆる権利行使と恐喝が問題となる。」

イ「AはBに所有権を対抗することができるか,545条1項但書の意義に関連して問題となる。」
(※B→C→Aと所有移転。その後Bが契約を解除したものとします。)


といった論述は,問題提起をしているように思えますが,読み手には,書き手がなんでその問題を論じるのか分かりません。より正確にいえば,確かにその論点は問題となるのだけれど,どうして書き手は問題となると考えるのだろうか,その思考過程を書いてほしいなと思うのです。書き手側は,「問題となる」と書くことで問題提起をしたように錯覚してしまっているのかもしれません。
そこで,例えば,

【例2】
ア「甲はAに対して〇万円の損害賠償債権を有している。そうすると,本件の取り立て行為は,恐喝罪の構成要件にあたるとしても,権利行使として行われたものとして,違法性を欠くのではないかが問題となる。」

イ「Bの解除により,法律関係は遡及的に無効となる。そうすると,Cから甲不動産を買い受けたAは所有権を取得できないのが原則である。もっとも,解除権の行使は,第三者の権利を害する場合には認められない(民法545条1項但書)。そこで,Aが「第三者」にあたるかが問題となる。」


というように,問題の所在を意識して丁寧に書いてみると,読んでいる側にも書き手がどう考えているのか良く分かる文章になります。
以上のとおり,「問題となる。」と書いたからと言って問題提起をしたことにはなりません。ご自身の論述が本当に問題提起になっているかどうか,もう一度確認してみることをすすめます。

参考までに,その年の合格者2名(いずれも刑事系2ケタ上位で合格)の問題提起部分を掲げます。きちんと問題の所在が示すことが,そのまま答案の読みやすさ,分かりやすさにつながることをお分かり頂けると思います。

【合格者A】
「もっとも、甲は、Bから取立の委任を受けたものであり、委任自体は適法であるから、正当な権利行使として違法性が阻却されるのではないかが問題となる。」

【合格者B】
「しかし、本件において、甲は、実際にAに対して交通事故に基づく120万円の不法行為債権を有するBから、債権回収の承諾を得た上で、本件請求行為を行っている。そこで、当該行為は、民法上の債権行使の一態様であって、正当行為(35条)となるのではないか、問題となる。」






第2 ②規範定立について
②については,「どうしてそういうルールを立てるのか」を書くことが必要です。
この部分については,みなさんがいままで散々「論証」として意識してきた部分ですから,①や③よりも大分意識されて書かれる方多いのではないかと思います。
ただ,「~だから,〇〇と考える。」と書くときに,これまた先程の「問題となる」の例と同様に,「~だから」と書いたからといって,必ずしもちゃんとした理由づけになっているとはいえないということに気をつける必要があります。

また,(1)理由づけを省略していきなり規範を書くこと,(2)規範を全く書くことなくいきなりあてはめを行うことは避けた方がよいです。(1)は,とくに影響力の強い判例がある部分について,判例の規範を理由なしに書く答案を良く見かけます。

たとえば,先程のH19刑法の例でいうと,次のようなものです。

Bの権利を行使したとして正当行為(35条)に該当するとも考えられる。そして、自らの債権の行使というためには、債権の範囲内であり、取立の方法が社会通念に照らして相当であるか否かによって判断すべきである。


確かに,この論点については,最高裁が「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする」という判断を示しています。上の例もこれを意識して書かれた答案だと思います。
そして,読み手としても,そうであろうということは分かります。しかし,この問題は,その論点について判例を知識として知っているかどうかを聞いているわけではありません。いわゆる「権利行使と恐喝」という問題について,書き手がどういうルールを使って解決すべきと考えるのかを聞いているのです。ですから,書く方は,たとえ判例と同様の規範を採用するとしても,「私は,こういう理由から,判例の規範を使って解決すべきと考えます。」ということを書かなければなりません。
具体的には,この論点を違法性の段階で考えるという立場を前提とするなら,たとえば,「違法性の本質の理解(違法性というのは,法益侵害という結果無価値のみでなく,行為無価値をも考慮すべきもの)→ 手段の相当性を含めて社会的に相当といえる行為である必要がある。→ したがって,判例の規範」というように書いていくことが考えられます。

次に,(2)規範を全く書くことなくいきなりあてはめる答案もたまに見かけますが,これはかなりマズイです。「~が問題となる。本件では〇〇である。したがって,・・となる。」と書かれたのでは,書き手がいかなるルールによって事案を解決しようとしているのかが分かりません。
あてはめる対象(ルール)なく事実を列挙しても,何の意味も持ちません。

「法律という誰もが認める一般的なルールがあって,その意味を解釈すると,こうなる。そうすると,本件の事実関係の下ではこういう結論になる。」というように,自分の結論は法律から自然に導かれたもので,たんなる個人的な感想・意見じゃないんだということを示さなければなりません。
法律に書かれたことには従わなければならないという暗黙の前提がある以上,本件の結論はみんなで決めたルール(条文)から出てくるんですよという主張は,極めて強力です。
そうである以上,本件を解決すべきルールはこれであると示す作業は,論述の核となる部分ですから,絶対に省いてはいけません。答案は感想文ではいけないんです。




第3 ③あてはめについて
③については,「具体的事実がどうしてその規範にあたるいえるのか」を書くことが必要です。
よく,あてはめを重視しようとか,ただ事実を列挙するだけでなく個々の事実の意味を評価して論述しよう,などといわれていることとほとんど同義です。

【例1】
「私はこの事実aは,このように評価できると思う。だから,(抽象的な)規範にあたるといえる。事実bについては,たしかに,こうも評価できるけれど,そうではない。このような理由からこういう風に評価すべきなんだ。だから,(抽象的な)規範にあたるといえる。したがって,・・」

というように,事実への評価を加えるということは,すなわち事実が規範になぜあてはまるといえるのか,具体的な事実が抽象的な規範にあてはまるように橋渡しをしてやる作業をするということです。これが,

【例2】
「本件では,事実a,事実b,事実cが認められる。これらを総合考慮すると,規範に該当するといえる。したがって・・」

というように書いてあると,読み手(採点者)には,なんで規範に該当するといえると考えているのか,書いた人はどう総合考慮したのか分かりません。読み手側で,こういう理由なんだろうな,と勝手に補って採点するわけにはいきませんから,困ってしまいます。そうすると,仮に,答案のあてはめ部分について,(1)規範に当てはめるべき事実を正確に把握しているか,(2)規範に当てはまる理由(事実への評価)が述べられているか,という2つの観点から点がふられていると考えると,(2)への点を全て失ってしまうことになります。
さらに,「なんで」という部分が書いてない文章は,論理的でない印象をあたえますから(上の例1と例2を読んでいただければ,どちらがよいか明らかだと思います。),この書き手は論理的な思考がいまいちなのではないかと思われることによって,答案全体の印象も悪くなる可能性があります。
先日書いたように,たとえ書き手が頭の中で,例2の「総合考慮」を行ったとしても,その過程を文章で示さなければ,読み手には伝わらないのです。

ここで再度,刑事系上位合格者のあてはめをみます。
比較のため,例2のパターンで書いた場合も挙げます。

【例2のパターンで書かれたもの】

「因果的寄与が除去されたといえるためには,・・・(中略),自らの影響力を除去する必要があるというべきである。(中略)・・本件共犯行為は,実際にAを恐喝し詐欺する行為が専ら甲によって行われたものである。また,乙は,不良仲間で後輩格である甲に対し,「警察沙汰になったら、おれが迷惑することを忘れるな」と強く念押しした。さらには,乙はその後のAとの交渉にも立ち会っていない。
これらの事実を総合的に考慮すれば,乙が本件行為に及ぼした影響は,完全に除去されたものというべきである。」


【刑事系超上位合格者のもの】
※赤字部分などは読みやすさの便宜を考慮して私が追加したものです。

「因果的寄与が除去されたといえるためには,・・・(中略),自らの影響力を除去する必要があるというべきである(規範)。
(中略)・・さらに,そもそも,本件共犯行為は,実際にAを恐喝し詐欺する行為が専ら甲によって行われたものであり(事実摘示),乙の存在は、甲を精神的に威勢づけるとともに、二人掛りでAと交渉することで同人に対する影響力を強める効果があった(評価)。しかるに,乙は,不良仲間で後輩格である甲に対し,「警察沙汰になったら、おれが迷惑することを忘れるな」と強く念押ししたのであり(事実摘示),これは,甲に対する精神的な助成を除去するとともに,かえって,甲が以後の犯罪を継続することを強く抑制する効果すらある発言である(評価)。また,乙がその後のAとの交渉にも立ち会っていない以上,Aに対する影響力もない(評価)。
そこで、乙が本件共犯行為に及ぼした影響は、完全に除去されたものというべきである(結論=規範への該当性」)。


どうですか?どちらが説得的かは一目瞭然ですよね。
けれど,例2のパターンに陥っている答案は,私が見る限りかなり多いと思います。
あてはめをしっかりやるというのは,かなり難しいことであるにも関わらず,ここに力を割いていない人が多いように思います。元々センスがある方でも一定の練習量をこなすことが必須です。
あてはめなんてその場で何とかなる,という考えはやめた方が良いと思います。意識して書いていかないと,知らず知らずのうちに事実列挙型(例2のパターン)に陥ってしまいます。

また,あてはめの箇所は,本当に規範を理解しているかを見られる場面でもあります。
「具体的な事実を規範に当てはめる事ができる」,ということは,翻って規範の内容を正確に理解し使いこなすことができているということを意味するからです。あてはめが不十分で,採点者に,この人は抽象的な規範だけを覚えているのではないか,と思われるとかなりマズイです。
(たとえそうではなくても),単に覚えた論証を吐き出しているだけの答案と見られてしまうのは,あてはめが不十分であるからだろうと思います。
あてはめの論証は,規範の論証とセットで,同じくらい重要なんです。絶対に軽視しないでください。




長々と書いてしまいましたが,以上のことを答案作成にあたってはきちんと意識すべだと私は思います。理由づけを丁寧に書くと,文章がくどくなってしまうという面は確かにあります。
しかし,だからといって理由づけを放棄して書いてもよい,という方向へいくのはおかしいと思います。いったん,きちんとした型を身につけてから,それを場合に応じて崩していくのと,最初から型を無視して自己流で書くのとでは,答案の説得力に雲泥の差が出ます。

theme : 司法試験・資格試験・語学試験
genre : 学問・文化・芸術

comment

管理者にだけ表示を許可する

質問

maso様
参考になる記事を書いていただき、ありがとうございます。

問題提起、規範部分、あてはめの書く分量のバランスについては、
どのような意識をされていますか?

私は、再現答案を添削してもらった際に、
「一般論や前置きが長すぎる、もっと端的に書くようにしろ」
という内容の指導を受けました。

現在、問題の所在を示す際に、もっとコンパクトな書き方
はできないだろうかと思案しております。




こんばんは♪

かなり前の記事で、最高裁判所判例解説(法曹会)が重要だと書かれていますが、
何年度版からmasoさんは参考にされていますか?


また具体的な使用方を教えて頂きたいです(>_<)

No title

> 一受験生さん

ご質問ありがとうございます。

問題提起,規範部分,あてはめの書く量のバランスについては,一般的にこの程度,という決め方はしてはいませんでしたが,新司の答案として見たときにきれいなのは,問題提起&規範定立:あてはめ=3:7あるいは,4:6だと思います。このあたりのバランスは,合格者の再現答案を分析してみてください。ただ,これはこの比率ありきで答案を作成するというよりは,あてはめで問題文に転がっている事情丁寧に拾って評価していこうとすると,必然的にそれくらいの比率になってしまうということです。法律論を意識的に少なくすることによって,相対的にあてはめの比重を減らすという意味ではありません。
よく,法律論はサラッと流して,あてはめを書きまくろうといわれますが,それは決して法律論をおざなりにしてよいという意味ではないと思います。なぜなら,法律論の後にくるあてはめ作業は,法律論によって定立した規範に事実をあてはめるということをするもので,あてはめるべき規範がいい加減では,絶対に上手くいきっこないからです。
そうすると,サラッと流しての意味は,コンパクトに要点を捉えて過不足なく法律論を展開する,ということだと考えられます。

①もし,答案について,その添削指導を受けた方に直接聞くことができる環境があるとすれば,答案の問題提起部分を自分でコンパクトだと思う形に書きなおしたうえで,その書き方でよいかどうかを聞いてみるのが良いのではないかと思います。
②また,ご自身で考えてもなかなかどう書いたらよいかわからないということであれば,優秀だと思う受験仲間にその問題提起部分だけを読んでもらって,どういう印象を持つかを聞いてみるの良いかも知れません。もしそこで,ちょっとダラダラ書いてる感じがあるよね,的なことを言われたら,どういう風に書いたらよいかな?(仲間)だったらどう書く?と積極的に聞いてみるといいと思います。
③あとは,その年の優秀者の再現答案を検討して,どうやってコンパクトに書いていくのか,どういう風に書いていくと,きれいに流れるのかを分析して,それを練習過程で何度もそれに近づくように実践練習をするのも有効です。
④何度も練習してみると,ご自身の論述のクセが見えてくると思いますので(たとえば,問題提起までが冗長になってしまうとか),そこは,論述するときに意識すべきポイントを書くためのノート等を作って,「論述では問題提起までをコンパクトに書くように意識する。具体的には,①・・②・・ のような感じで書く。」などとメモって置き,答練等の前に見直して意識付けをするということも効果があると思います。

> トシさん

ご質問ありがとうございます。
同一の書き込みが3つかぶって投稿されているようなので,2つ削除させていただきました。

ご質問の件については,
以前の記事
①「画像3」
http://hayamaso.blog91.fc2.com/blog-entry-61.html
②「調査官解説の補足」
http://hayamaso.blog91.fc2.com/blog-entry-66.html
もしくは,
③「Q&Aのまとめ1」
http://hayamaso.blog91.fc2.com/blog-entry-51.html
にて,お答えしておりますので,そちらをご参照ください。
その上で,質問等あればまたコメントお願いします。

有難うございます。

どうも私は、原則論を厚く書きすぎるクセがあるみたいです。
原則論だとこうだけど、これだと問題があるから論点が生じてくるみたいな
ことを書かないとどうも落ち着かないです。。。

maso様のアドバイスを参考に修正してみます。

No title

一受験生さん

>原則論だとこうだけど、これだと問題があるから論点が生じてくるみたいな ことを書かないとどうも落ち着かない

これは論述の方向性としては全く間違っていません。
私個人としては,答案はそう書くべきだと思っています。
原則でストレートに解決できないから,例外(論点)が出てくるわけで,
原則なしに例外があるわけではないからです。
考えた過程が丁寧に示された答案は,非常に読みやすく,かつ論理的な印象を与えます。

たしかに,長々と一般論を述べるのは答案のバランスの観点からマズイですから,今後コンパクトに書けるように修正していく必要があります。しかし,冒頭部分が短くなったのはいいものの,いきなり論点(例外)の問題提起を原則の前置きなしに書くような答案にならないように注意してください。
コンパクトにすることと,省くことは違うということに注意して,内容をうまく圧縮する方法を追求されたら良いのではないかと思います。
04 | 2017/05 | 06
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
プロフィール

maso

Author:maso
弁護士(63期)。いわゆる大手渉外法律事務所で働いています。

maso on Twitter
カテゴリ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

masoブロ カウンター
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。